民族舞踊を踊るベンゲット州の子どもたち

WINDOW
(財)高知県交流協会
2000 世界の笑顔あつまれ
Spring No.25


〈特集〉
高知県・ベンゲット州友好訪問団
◆「おぴにおん」
  JICA東京国際研修センター研修第1課
  課長代理 小淵 伸司
◆「韓国光州市中高生来高」
◆民間国際交流団体紹介
 「国際芸術交流会」」
◆Letters from Abroad
  濱崎 静夫(タンザニア)

−opinion−


高知大学農学部を卒業後、青年海外協力隊として活動したバングラデシュ、JICA(国際協力事業団)在外事務所員として赴任したザンビア、これらの開発途上国の講演活動を行い、国際協力の現場でご活躍されている小淵さんにお話を伺いました。


JICA東京国際研修センター研修第1課
課長代理 小淵 伸司

◆青年海外協力隊員時代に感じたことは。
 バングラデシュでの協力隊員時代に感じたことは、生まれて初めての海外ということもあり、かなり強烈でした。まず、とにかく人(特に、子供)がうじゃうじゃいること。これは、田舎のどこへいっても子供がいつのまにか周りにいる、つまり湧いてくるという感じです。
 次に、水平線が見える川、大地が水平線になる洪水、コレラがあっというまに広がり人々が死んでいく様子などを目の当たりにしていると、自然は凄いという畏敬の念を抱かざるを得ませんでした。「人が自然を支配しているのではなく、人が自然の一部である」ということを身を持って感じました。
 それから、同じ人間なのにこうも違うものかといつも感じていました。バングラデシュでの最初の半年は、ほとんど怒りっぱなしだったと思います。貸した物はまず返らない、平気で嘘をつく、少しでも目を離すとすぐ物がなくなる、そんなことが毎日のように起こりました。今まで私が日本で身に付けたはずの価値観や道徳感がことごとく崩れ去ったのです。
 しかしながら、2年目になると生活にも慣れ、協力活動も充実しました。農場の稲は大豊作となり、倉庫はモミで溢れました。同僚や学生たちが喜んでいた姿を今でも思い出します。

青年海外協力隊員としてバングラデシュでの農業改良普及員養成校で稲作実演及び講議にあたる小淵さん(1983.4 - 1985.4)

◆サーモン・キャンペーンで子供たちと接して感じたことは。
 私の子供が通っている小学校での講演後、子供たちからの感想文を読ませていただきましたが、私の講演を通して子供たちは「この地球上で同じ世代の子供たちが学校で十分な教育を受けることができず、ボロボロの服を着て、食べ物も十分に食べることができず、病気になっても治療してもらえず、多くの子供たちは小さい時に死んでしまう」ということに素直に気付いてくれました。この素直に気付くということは非常に大切で、小学校3〜5年生頃が重要な時期のように感じました。この講演を通して子供たちが気付いたこと知ったことは、自分たちの普段の生活を振り返り、見直す一つの機会になったように思うのです。  
 彼らの100人の内1人でも2人でも、開発途上国の子供たちと日本の子供たちの生活状況との違いを自然と感じ、今後成人していく過程で思い出し、生活の心の糧として役立て、あるいは生業の一つとして地球的な規模で活躍する人材に育っていただければ、この上ない喜びです。

◆私たちが身近にできる国際協力には何がありますか。
 将来、国際協力を担う人材育成という視点では、やはり子供たちになるべく多くの途上国を知る機会を提供することだと思います。例えば、NGOや協力隊経験者、日本に技術を学びにやって来た途上国からの研修員の講演会実施、JICA主催の国際協力作文コンクールの促進(優秀賞として途上国視察ツアーあり)、NGO等が主催する途上国へのスタディーツアーへの参加、学校の修学旅行先を途上国にするなど様々工夫して、将来の国際協力を担う人材を育成することが重要だと思います。

◆これからの国際協力のあり方をどうお考えですか。
 私個人の意見ですが、「同じ一つの地球上で一緒に生きている仲間」という認識のもと、日本政府、地方自治体、民間企業、NGO、教育関係者、地域の人々など日本人全体が一つの共通理念を持って様々な方法で「地球市民として活動」を行っていくことではないでしょうか。その私が今持ち合わせている共通理念とは、日本国憲法の前文にあると思います。
 実は、その「地球市民として活動」を行うことこそが、腐敗化している日本社会(特に教育)に風穴をあけ、多くの市民が動いていく新たな原動力になると感じるのです。それは、何か行動をとった結果、損得の勘定ではなく、人間の生き方として役に立つ体験をしていくことが重要だと思います。国内において記憶に新しいのは、阪神大震災等において自発的に助け合い、充実感を覚えた方が多く存在したことです。

◆最後に、国際協力にたずさわりたいと思ったきっかけを教えてください。
 改めて思うと、協力隊に参加した時は、結局は自分への挑戦であったように思います。国際協力という言葉を使用していても、ただの気負いと勢いだけであった気がします。
 国際協力という仕事を選んだのは、バングラデシュという国で初めて体験した協力隊の活動を通して、「私でも少しは役に立つのかも知れない」と思い始めたことがきっかけであったかも知れません。

 

*サーモンキャンペーン…開発途上国の実情を知り、国際協力の必要性を理解してもらうため、JICAが職員や専門家、青年海外協力隊OBなどを講師として学校などへ派遣する事業。

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