ハワイ・アラモアナビーチにて |
WINDOW 〈特集〉 国際「土佐人」のルーツを訪ねて ハワイツアー ◆「すべては自分の中にある」 高知大学大学院農学研究科 大森 一輝 ◆「日本青年中国派遣団に参加して」 高知県青年国際交流機構 有澤 めぐみ ◆協会創立10周年記念シンポジウム ◆第3回国際メッセージより 清水高校 作田 優美 ◆民間国際交流団体紹介 「高知県日本中国友好協会」 ◆Letters from Abroad 青木 順子(トンガ) 森下 真琴(ルーマニア) |
−おぴにおん−
高知大学大学院農学研究科 大森 一輝 1998年から2000年まで3年にわたり、年間1〜2ヶ月インドネシアでサゴヤシの調査を行ってきました。サゴヤシとは幹に大量のデンプンを蓄えるヤシで、泥炭質土壌(東南アジアの2000〜3000万haにもわたる作物を栽培できない困った土壌)で栽培できる唯一の作物であることから、21世紀に来るであろう食糧不足の救世主として期待されています。近年、このサゴヤシの大規模なプランテーション(外国資本による大規模農場)開発が試みられており、現状を調査すべくインドネシアに向かいました。 インドネシアで活動するにあたって心がけたことは、全ての人に挨拶すること、誰よりも地面に近いところでしんどい仕事をすること、吸収できるすべてのことを吸収すること、そして現地の言葉で話しかけることの4つでした。こう書くと、いかにも言葉に堪能なように聞こえるかもしれませんが、当時私は挨拶の単語とお礼の言葉くらいしか知りませんでした。総単語数3語くらいだったのではないでしょうか。 最初、挨拶しながら歩き回ったのですが、そのときの反応は20%が笑顔で「おう!」、50%は不思議そうに「何じゃ?」、残りは「何しに来たんやこのヤロー」。そのうちあんまりしつこく挨拶するので、だんだん「しゃあないなー」という感じの笑顔で返してくれる人が増えてきました。言葉もわからないなりにも一生懸命話しかけると、本当に一生懸命応えてくれるものです。そのうちだんだん言葉もわかるようになり生活にも慣れてくると、少しずつ向こうの人の物の見方、感じ方、考え方がわかってきました。 そうして気付いたことの多くは現地のことではなく、むしろ自分のことであったように思います。現地の価値観をとおして自分や日本人を見たときに初めて気付くことの多さに驚かされました。私は現地の人との対話の中で、現地の人がなぜそうなのかと考えるのと同時に、ではなぜ日本人がそうなのかと問うことを繰り返しました。その結果、どちらが優れていてどちらが劣っているという判断基準はそこには存在しないというのが私なりの結論でした。 私がインドネシアに行くと言ったときの祖父の言葉を思い出します。「おまえはインドネシアにいったい何を教えに行くんや。」これは日本人の根底に当然のようにある途上国の人に対する優越感でしょう。現地で多くの人の世話になり、自分が無意識のうちに抱いていた優越感を恥ずかしく思いました。 日本では当たり前に存在する便利な物の無い生活の中で私が感じたことは、無いことへの不便さではなく、便利な物の不必要さでした。あればある生活があり、無ければ無いなりの生活があるのです。 日本人は物理的に満足し、楽しく生活するために必要な物を全て手に入れてしまったのではないかと思います。物を得ることでは、便利になることでは埋まらない穴を、一生懸命物で埋めようとしているように感じます。私は現地でどんな環境でも楽しく生活するすべを手に入れました。これ以上ない宝物を見つけることができたのです。「すべては自分の中にある。」 |
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