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「新米研修監理員奮闘記」

(財)日本国際協力センター

研修監理員 有澤 めぐみ



私自身勉強の日々:
沖縄県栽培漁業センター八重山支場にて

 皆さん、「研修監理員」という職種があるのをご存知ですか?JICAが国内で実施する研修コース(*)において、通訳や視察の手配・引率及び研修関係者間の連絡調整を担当する仕事です。県内では、高知工科大学での「地域水資源環境管理コース」と、高知大学海洋生物教育研究センターでの「栽培漁業コース」の二つの研修コースが実施されています。私は、「栽培漁業コース」の新米研修監理員として、6月初旬から11月初旬まで、チリ、ブラジル、中国、インドネシア、タイ、トルコ出身の7名の研修員とともに、毎日全力投球の日々を送りました。

 当初、研修監理員業務を遂行するにあたって一番心配したのが通訳です。大学で専攻したのは英語で水産を全く知らないこの私が、時には講義の通訳も務めなければなりません。案の定、研修が始まったばかりの頃は、研修員が何を訊きたいのか理解できないことが多々ありました。しかし、時間が経つうちに、研修員と水産に関する話をするうちに、どうして彼らがそのような質問をするのか、その背景が見えてくるようになったのです。すると、通訳する時に「研修員はこう考えているから、この質問をするのです」と補助的な説明を加えることができ、未熟ながらも以前よりは分かり易い通訳ができるようになりました。


長靴がよく似合ってる研修員たち:
長野県水産試験場にて

 5ヶ月間、私の頭の中にはずっと「わざわざ日本に研修に来たのだから、何か成果を得て帰国してもらいたい」という思いがありました。異なる仕事を持つ研修員が集まったこの研修コースでは、事前に用意されたプログラムだけでは研修員の期待に応えられない場合があります。何か彼らの役に立ちたい、彼らの国の役に立ちたいと、要望が出れば休みを返上して養殖場や栽培漁業センターに出かけることもありました。研修員から「とても興味深い研修だった」と聞けば、心から「良かった」と思いました。時々「無理なことばかり言って…」と腹の立つこともありましたが、やはり「いい研修だった」と聞けば、「無理して手配してよかった」と思いました。

 先日、あるNGO団体のホームページで、その団体のスタッフとしてザンビアに駐在している元青年海外協力隊員の記事を目にしました。そこには「協力隊員として活動するうちに、国家という枠組みでの支援の無理、無駄を痛感した」とありました。正直、研修監理員を務めてみて私もそう感じました。もちろん、研修全てを否定するわけではありません。そこには、技術や知識を伝えようとする日本側の熱い思いもあります。技術を学んで自国に貢献したいという研修員の思いもあります。しかし、それが上手く噛み合っていないように見えるのです。何のために研修を実施しているのか。日本が今一度、原点に戻って考え直さなければいけないことだと思います。  11月2日、5ヶ月間の研修を終えた研修員が高知空港を飛び立ちました。涙と笑顔が入り混じる中、「ありがとう。また会おうね!」と約束して別れました。離高後、一人の研修員からメールが届きました。そこには「有澤さんは、普段は穏やかだけど、激怒する時もあった!いつも皆のことを心配してくれた」と書いてありました。その気持ちを忘れず、これからも、より効果的な研修が実施できるよう、関係者の方々と力を合わせて研修監理員として頑張っていきたいと思います。



*研修コースとは*

JICAがODAの一環として実施する技術協力事業の一つ。開発途上国の国造りの中核となる人材を日本に招き、日本の技術や知識を伝えて、自国の発展に役立ててもらうことを目的としている。年間およそ2,600コースを実施、毎年約8,500人の研修員が来日している。


みんなが開いてくれた誕生日パーティー


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