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Letters from Abroad

高知県出身で現在アメリカに留学中の野村洋子さんと、中国安徽省で日本語講師として活躍中の玉井智奈さんからお便りが届きましたので紹介します。




「二つのアメリカ」

アメリカ ミネソタ州在住 野村 洋子

 ミネソタ州立大学大学院で環境工学を学び始めて、三ヶ月。今回、何よりも大きな出会いは、今住んでいる家を見つけたことです。私を含めて12人の女子学生が台所やシャワーを共同で使い暮らしています。皆、個室のせいか、案外静かで、住み心地は快適です。一つ屋根の下に住めば「家族」というのは「ほんまやな」と実感しています。

 最近、この平和な「我が家」でもちょっとした、事件がありました。それは、今のアメリカの世論をよく表していると思われますので、紹介させて頂きます。「我が家」の一人の女学生が、アメリカ国旗を家の玄関口に揚げました。丁度、イラク国民がフセインの像を倒す映像が何度もテレビ放映されていた頃のことです。半数の女子学生は、今、星条旗を揚げるのはこの戦争をサポートしているように思える、と不快感を表しました。残りの半数は、アメリカで星条旗を揚げるのがなぜ不快なの、イラクの自由のために戦っているのに、とお互いを理解し合えません。大家さんも交えての電子メールでのディスカッションの末、公共の場はニュートラルにするという結論で、国旗は下げられました。日本の新聞をインターネットで読む限り、日本では戦争反対を叫ぶ声のほうが大きいように感じます。だから、日本にいるとなぜアメリカ人の多数がこの戦争の正義を信じているのだろうと疑問に思われるかもしれません。それは、そのくらいアメリカのメディアが偏っていて、真実が表に出されていないということだと思われます。アメリカに住んでみると、アメリカ国内での反戦運動のエネルギーには驚かされるものがあります。その反面、メディアをそのまま信じてしまった参戦派の人たちとの間にできた溝は深く、うっかり戦争の話などできません。今のアメリカは平和を望みながら、二つに分かれてしまっているように感じられます。世界の平和を望みつつ、自分にできる平和作りについて考えさせられる日々です。


仕事中:油性のペンキや家庭用化学農薬、強酸性、強アルカリ性の家庭薬品など有害廃棄物の収集 みんな素敵な笑顔でしょう? :我が家にて(前列左端が野村さん)




「ネイティブにできること」

中国 安徽省在住 玉井 智奈

 中国安徽省での2年間がまわり始めました。ネイティブの日本語教師として、安徽大学日本語学科の2年生26名に授業をしています。

 こちらに来てまず驚いたのが、授業のレベルの高さです。中国人の先生でも、日本語の授業ではほとんど日本語、英語の授業ではほとんど英語を使って授業をしています。先生方、そしてそれについていく学生たちの姿勢に胸を打たれます。

 日本語学科というだけあり、日本についてさまざまな興味そして知識を持っています。日本のドラマ、俳優、マンガなどにも敏感で、私より詳しく知っているものもあります。精読の授業では、日本人でも途中で嫌になりそうな難しい内容の長文に取り組んでいます。聞き取りの授業で扱われるテーマは、「学歴社会」「夫婦別姓」「いじめ問題」など社会問題が中心です。そうして毎日毎日、日本に関してひたむきに学んでいるのです。

 そんな彼らを見て、私は何を教えることが出来るだろうと思うときもあります。私は日本語ではネイティブです。しかし私が自負できるのはそれだけで、日本に関する知識は彼らより少ない気がして気後れしそうになるのです。

 でもそんなときには、ネイティブである私だからできることがあるはずだと思い直しています。学生たちはみんな、日本語で意思の疎通ははかれるし、基本的な読み書きもできます。しかし、アクセントがおかしかったり、言い回しがおかしかったり。そういうネイティブだから気が付く点を教えていきたいです。そして毎日使う日常的な会話表現や、ものの数え方、彼らが日本人と交流するとき、日本に行ったときに困らないような手助けができればと思います。

「まちがってもいいよ。そうして覚えていけばいいから。」

「“習うより慣れよ”だからね。」

と、私は学生たちに言います。これは、自分にも言い聞かせていることばです。

 この2年間は、日本語教師の経験が積める機会であるとともに、私自身、本場中国で中国語を学べるまたとない貴重な機会です。学生に負けないように、私も中国語のレベルアップを目指します。



女同士話は尽きません:女子寮にて(後列右から2番目が玉井さん)



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