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Summer No.26

JICA青年招へい事業


橋本知事と握手を交わす団長


 平成12年5月31日から6月7日まで、国際協力事業団(JICA)所管の青年招へい事業の一環で「中国教員チーム」が来高しました。青年たちは、明徳義塾中高等学校や高知女子大学訪問、2泊3日のホームステイなどを通 して、高知の人々と交流を深めました。 国際団長にお話をお伺いしましたので、ご紹介します。

■高知の印象を聞かせてください。

 山や川がきれいで自然が美しい、また、地域にあるのに教育が進んでいるというのが高知で受けた印象だ。ホームステイした葉山村は施設も整っており、学校では教師が熱心に子どもたちの指導にあたっていた。大都会から離れているのに東京と変わらないと思った。
 学校見学では、明治維新以来、日本が国民教育にどれだけ力を入れてきたかということを知ることができた。高知は人口は少ないが高知工科大学があったりと教育に力を入れて取り組んでいる。国の発展は教育から始まる。教育をうまく発展させ、国民の資質を向上させて初めて国の繁栄がある。高知での研修をとおして、それをさらに実感した。

■中国の教育現場との違いはどこでしょうか。

 勉強、道徳の教育においてはさほど違いはないが、日本では勉強だけでなくスポーツにも力を入れているという点が大きな違いだろうか。中国では勉強中心でスポーツに対する取り組みが足りない。最近では太った子どもが多く、体質も十分ではない。
 見学した明徳義塾中高等学校は、スポーツに非常に力を入れていた。現代社会の競争は激しく、頭脳の発達だけでは応じられない面 がたくさんあると思う。小さいころから体を鍛えておかないと社会の競争には着いていけない。

■中国でも青少年犯罪は問題になっていますか。

 基本的に、中国の教師は権威を持っているので、一人っ子政策の影響で家庭では甘やかされて育ち親の言うことを聞かない子どもたちも、学校では先生の話をきちんと聴く。中国ではいじめが原因で自殺する子どもはほとんどいない。
 ただ、青少年問題、犯罪は少ないがある。近年のインターネットの普及により、中国の青少年も世界を知ることができるようになった。と同時に、悪い情報も入手できるようになってしまった。また、大都市にはゲームセンターがたくさんあり、それに興味を示し勉強をしなくなった子どもがたくさんいる。ゲームをするお金欲しさに下級生からお金を巻き上げたり、強盗まで犯す生徒がでてきた。これは、政府、教育機関、学校、家庭が力を合わせて解決すべき問題だ。

■今の日本の教育の問題点は何だとお考えですか。

 親は仕事が忙しいため、子どもの教育が十分にできず、子どもとのコミュニケーションがうまくとれないという家庭に問題がある。また、隣人との交流が少ないため、子どもどうしの交流が足りない地域にも問題があると思う。
 これには真剣な検討が必要だ。子どもは社会全体の中に生きているのだから、学校だけではなく家庭、地域、学校を融合した教育を考えなければならないと思う。
 明徳義塾でクラブ活動を見学して思ったことだが、クラブ活動を学校だけではなく地域でやってみてはどうだろう。地域のお年寄の方たちが自分の特技を生かして色々なクラブを組織してはどうだろうか。
 家庭教育は教育の基礎である。若い親たちも常に勉強して自分の質を上げていくべきだ。親は子どもが小さいときから道徳、知識、しつけにおいて子どものいいモデルにならなければならない。

■日本の子どもたちを見て感じたことは何ですか。

 日本の子どもは生活環境、教育環境に恵まれている。ホームステイや学校訪問をとおしてその理解が一層深まった。例えば、日本の小中学校の1クラス当たりの生徒数は中国のそれと比べてずっと少ないし、設備も日本の学校の方がずっと進んでいる。 日本の子どもたちには現状に満足するのではなく、常に前に向かって努力してほしいと思う。その一方で、親から受け継いだ伝統も守り続けてほしい。

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