WINDOW

Summer No.29




Letters from
Abroad

高知県出身で、JICA日系社会青年ボランティアとして活躍している前田さんと、国際教育交流協会実施のオペアプログラムに参加している永森さんからお便りが届きましたので、ご紹介します。




「アルゼンティンのカギ社会」

日本語学校教師 前田 紗織


カテドラル

 アルゼンティンで驚いたのはカギの多さです。まず、アパルタメントに入るときにカギが必要です。オートロックでない場合は入って内側からカギを閉めておかなければなりません。そしてエレベーター。自分の家の階でエレベーターの扉を開けると(こちらは全て手動)、そこにカギつきのもう一つの扉が登場します。これを入って内側からきっちりカギをかけておかないと、他の人がエレベーターを使えないという事態になります。エレベーターの扉の次はやっと自分の家の扉です。これも普通カギは2箇所あり、これをガチャガチャとやって、やっと我が家にたどり着けます。開け閉めなんと合計6回!こんな具合に、ありとあらゆるところにカギがあり、いつも皆、カギをジャラジャラやっているのが日常的です。
 自分にそれが無くて欲しくても、目の前にある他人のものを取ったりしないのが普通だと思います。しかし、この国では忘れている方が悪い、取って当然という考え方が一般的のようです。同様に、もし部屋のカギをかけ忘れて泥棒に入られても、それは自分が悪いのです。日本人の私には厳しい世界です。
 しかし、ここに1年以上住んでいる日本人が「いいこともあるよ」と話してくれました。「アパルタメントの入り口もエレベーターも玄関もカギが無いと入って来られない。だから例えば一人になりたい時や、会いたくない人が訪ねて来た時には知らんぷりできるのよ。日本ではゆっくり昼寝(注)もできないでしょ。」確かにプライベートな空間をしっかり確保できるという点ではアルゼンティンに軍配が上がりそうです。
 自己責任とプライベート重視のアルゼンティンと、人を信じられる代わりに他人も入ってきやすい他人と共存の日本。どちらがいいのでしょうか?
(注)アルゼンティンには「シエスタ」という昼寝の習慣があり、昼食の後から夕方4時ごろまでの日中一番暑い時間帯、郵便局をはじめ店の殆どが閉店する。



「カルチャーショック in USA」

オペアプログラム参加者 永森 美和


お世話をしている男の子と一緒に

 私がオペアとしてここヴァージニア州へ来てもう4ヶ月になります。オペアというのはアメリカの家庭に1年間滞在し、子供のケアをする代わりに週いくらかお金がもらえるという日本では1997年に始まったばかりのプログラムです。私たちは学生ビザでも就労者ビザでもなく、J-Iという交換留学生ビザで滞在することになるので、英語、アメリカ文化を学ぶと同時に、日本の文化をしっかりと伝えなければなりません。では、その大きな使命を背負った私のアメリカでの生活をご紹介しましょう。
 アメリカに来て一番強く感じたのが、毎日お弁当のおかずや夕飯の献立に悩んでいる「日本のお母さんの大変さ」です。こちらのお母さんはそんな悩みとは無縁のようで、お弁当も毎日同じメニュー(うちの場合はピーナツバターサンドイッチにスナック、ヨーグルト)だし、夕飯もレンジでチン!か、ピザ等ファストフードが主です。別に手抜きをしているわけではない様で、実際、子供たちもそれ以外は一切食べようとしません。
 楽しいのはスーパーです。たくさんのファットフリー製品が売られていて、牛乳にはじまり、ハム、チーズまでもがファットフリー(脂肪分0%)なんです!しかもお味の方は...いくらダイエットブームといえども、日本では絶対に流行らないと思うようなお味です。
 こんな失敗もしてしまいました。ここヴァージニアでは車は生活に欠かせません。日本車といえどももちろんスピード表示はマイルです。それに全く気付かず、私は60mph(100キロ以上!)を60kmphだと思って走っていました。というのもここはいわゆる田舎ということもあって、道が広くてゆったりとしているんです。スピード違反でポリスマンに捕まってしまった今では、全て言い訳になってしまいますが...。
 そんなこんなで毎日が新発見、驚きの連続。英語だけでなく、いつも目を見開いていないと見過ごしてしまいそうな事をしっかり学んで日本へ帰りたいと思います。

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