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平成13年度 ODA民間モニター報告
 政府開発援助(ODA)の現場を視察する「ODA民間モニター」制度があるのをご存知ですか?国際協力推進協会(APIC)と国際協力事業団(JICA)の共催で平成11年度にスタートしました。
 今年度、高知県からは秋沢潤一さんと上村文香さんが選ばれ、ヴェトナムのODA現場を視察してきました。
(聞き手:JICA国際協力推進員 大原健治)

(右写真)ODAで建設された学校を訪問


明るい教室で学ぶ子どもたち
大原 ODA民間モニターを知ったきっかけは何ですか?

秋沢 JICAが発行している雑誌「国際協力」の募集広告を見て、ドイモイ政策が順調に進んでいるヴェトナムの最近の動きを知りたいと思い応募しました。

上村 朝日新聞の広告を見て応募しました。行き先がヴェトナムだったので。

大原 青年海外協力隊の活動現場を見学してどのように感じましたか?

秋沢 助産婦をしている隊員は、首都から離れた僻地で、たった一人で現地の助産婦の指導をしていました。ヴェトナム戦争の影響で十分に教育を受けていない人々を助けながらよく頑張っていました。
 交通手段のない場所で陣痛が始まった場合は連絡を受けてから現地に向かったのでは遅いので、出産に必要なもの(脱脂綿、消毒薬、ハサミ、糸など)を袋に入れて出産間近な人に持たせ、近所の人に手伝ってもらって出産できるよう指導しているそうです。また、山岳部などに住む少数民族には古くからの風習が残っていて、病院で産むほうが安全だと指導してもなかなか分かってもらえず、根気強く何度も訪問し指導しているとのことでした。
 彼女のひたむきな行動からは、現地の人に溶け込み、住民の目線で彼らとともに活動していこうとする強い意気込みが感じられました。


安全な飲み水に喜ぶ園児
上村 彼女は、夏は暑いので水をかぶって寝、冬は寒いので靴下を履いて寝るそうです。でも、湿気が多いので朝にはベトベトになっていると言っていました。そんな劣悪な環境で大変だろうなと思いました。
 バレーボールの指導をしている隊員は、体格の良い人を見かけると「バレーボールで国のために頑張ってみないか」と声をかけているそうです。国が貧しいため、バレーボールが上手いかどうかは二の次なんですね。選手たちも「バレーボールで国に貢献したい」と言っていて、日本の子どもたちとの違いを実感しました。

大原 草の根無償資金協力で建設された道路や学校、水道設備の様子はどうでしたか?

秋沢 道路ができたおかげで、これまで現金収入を得ることが難しかった奥地の農民が商品作物を生産し都市部へ運べるようになったり、今まで道がなかったので学校へ行けなかった子どもたちが小学校へ行けるようになったりと、道路ができたことによって社会に変化が生じてきたようです。
 新しく建設された小学校は立派な鉄筋コンクリート製でガラス窓が取り付けられて教室内も明るく、これまでの現地の小学校とは全く違っていました。台風が来た時には住民の避難場所として、また、住民の会合の場としても利用されているそうです。

上村 建設された道路は全てがきれいな道路というわけではありませんでした。一番大きな幹線道路でも路肩に稲を干しているため車が対向車線にはみ出して走行しなければならない所もあり、通った時には恐い思いをしました。また、日本の援助でできた橋はとてもきれいなのですが、古い橋がゴミ置き場になってしまっていて、その点も考えて援助した方が良いのでは、と思いました。
 水道ができたおかげで周辺の衛生状態が改善され、幼稚園では新しく引かれた水道で手を洗えるようになり、病気も減ってきているという嬉しい話も聞きました。

大原 最後に、ODA民間モニターに参加された感想をお聞かせください。

秋沢 訪問先で会った現地の人たちは日本のODA減額の話を知っていて、「日本の援助は非常にヴェトナムの役に立っているし、市民も喜んでいるので減らさないように伝えてほしい」と頼まれました。これから特に大切とされる人的援助は減らさないようにしてほしいです。

上村 JICA事業のように人材育成に資金を使うことは、これからのヴェトナムにとって必要なことだと感じました。日本人の多くが税金の使われ方に関心を持っていないですし、新聞やテレビで知ってはいても実際見てみないと分からないことがたくさんあるので、ODA民間モニター事業は続けてほしいと思います。

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