WINDOW
Winter No.27
協会創立10周年を記念して、平成12年10月27日に城西館にてシンポジウムが開催されました。会場には約300人の県民がつめかけ、基調講演やフォーラムをとおして21世紀の国際交流を展望しました。フォーラムの要旨をご紹介します。
森木 これからの国際「土佐人」に望むことをお聞かせください。 永国 日本人に国際人としてやっていける自信を与えた男、ジョン万次郎。彼はアメリカにいれば金山で大金持ちになっていたのに命がけで土佐に帰ってきました。彼のそんな故郷をベースにした考え方は国際人の大事なポイントだと思います。今の若い人にも自分の故郷を大切に思うがために外国を見てくる、こんな視点がほしいですね。 池田 私は小学校高学年の2年半をアメリカで過ごしました。印象的だったのは、小学校でアメリカの歴史をしっかり教え、子どもたちがアメリカ社会というものを学び、それについて考えていたということです。それを見ていた私の胸には、自分たちは何なのか、日本人とは何なのかという想いが募っていきました。 そのような経験をとおして感じたことは、異文化との遭遇は異文化を理解することのみならず、自分自身を見つめ直すきっかけになるということです。若い人たちには国外、国内でいろんな機会に積極的に参加し、様々な経験をとおして国際感覚を身につけてほしいと思います。 沈 私は若者の文化交流に期待しています。現在、アジア諸国では日本の若者文化が大流行しており、台湾や上海では日本で流行っている曲がいつも流れているし、日本の若者と同じファッションに身を包んだ若者が街を闊歩しています。これを見ていて思うことは、若者文化に国境はないということです。これからは文化活動の交流を中心に取り組んでみてはどうでしょうか。日本文化のいい面を外国に伝えていくのです。 森木 行政の立場から見た国際交流・協力の現状と問題点をお聞かせください。 池田 まず、今の国際交流は特定のグループ、もしくは熱意のある方のみによって支えられているのが現状です。できるだけ多くの住民の参加を得る形で進められるべきだと思います。次に、イベントに頼る交流からの脱却。これからはイベントではなく継続してできるものが必要です。個人レベルで参加してよかったと思える仕組み作りや、人や国への憧れを喚起できるような取り組みをしていかなければなりません。そして、国際交流が地域づくりや町づくりにどのように貢献できるのかもこれからの課題だと思います。国際交流にはお金がかかります。最初から国や自治体、財団に頼るのではなく自分たちでお金を出したり、参加者の数を増やしていくために、国際交流が町を活性化していくんだというしかけを作る意識が必要です。産業につながれば、経済として国際交流が回転していくのです。 そのために今私たちにできることは、自分たちの町や県はこれが得意なんだ、これで生きているんだという自己確認をすること、国際化は外から与えられるものではなく内からなされていくということを認識すること、そして、相手との違いを理解した上で自分たちを変えていける大きい視野を持つこと、この3つです。 森木 日本がアジア諸国とおつき合いしていく上で大切なことな何でしょうか。 沈 それは、日本がアジア諸国に対してパートナーシップの意識を持って、対等の立場をとるということです。欧米志向からアジア志向に変えていく必要があります。 日本の若者にはアジアに目を向けてほしいですね。自分の目でアジアを見て、自分の頭でアジアの問題を考えてほしいと思います。 永国 幕末の土佐人は黒潮の向こうにある外国に大きな憧れを持ち、大きな意欲と興味を抱いて飛び出していきました。「幕末来、どうして土佐人は眠ってしまったの?」とは、かの司馬遼太郎の言葉です。新しい21世紀、もう一度、幕末のジョン万や坂本龍馬のように大きな憧れや夢を持ちましょう。中江兆民の尊敬したルソーは「旅こそ最大の教育である」と言いました。どんなことに興味をもてばいいのか、それは旅することによってはじまります。 森木 自立、個性、多様性は若い人にとって大事なキーワードです。自分はどういうものが好きか、何を磨くか、どんな人になってどんな人生を生きたいか、大きなところから自分を見つめて自分を育ててほしいと思います。あなたが個性や力を生かすということは高知県が力を生かす、大きくなるということ。自分の語学能力を、人との対人対応能力を、時代を生きる目をどんどん磨いてください。 激動の時代、国境がなくなる時代にジョン万次郎や坂本龍馬からもらったバトンを握って飛び立つのはあなたたちです。
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